2025年10月25日(土)
主張
高市首相所信表明
自民党政治の転換こそ必要だ
「衣の下に鎧(よろい)」―。高市早苗首相が国会で初めて行った所信表明演説を聞いて頭に浮かんだ言葉です。
「鎧」の最たるものは、2027年度に軍事費とその関連経費を合わせ国内総生産(GDP)の2%にするという政府の目標を前倒しし、今年度中に実現するというものです。加えて、この目標を定めた安保3文書を来年中に改定することを目指し、検討を開始するとしました。
■米言いなり大軍拡
一見、その重大さは抽象的な表現で隠されています。
安保3文書は22年に閣議決定されました。同年度の軍事費は5・2兆円(米軍再編経費など除く)。GDP比2%は11兆円となり、軍事費をおよそ2倍にするという大軍拡計画です。それを2年も早く実現するというのです。
高市首相はそのために補正予算を組む意向を明らかにしました。防衛省によると、今年度の軍事費と関連経費を合わせると9・9兆円(GDP比1・8%)に達します。補正予算に盛り込む軍事費は1・1兆円に上ることになります。
しかも、安保3文書の来年中の改定は、軍事費のGDP比2%を達成した後も大軍拡を続けることが狙いです。
今年2月、石破茂首相(当時)はトランプ米大統領との会談で、27年度にGDP比2%を達成した後の28年度以降も「防衛力を抜本的に強化する」とし、軍事費の大幅増を約束していました。安保3文書の改定はそれをいっそう加速するものです。
こうした大きな問題にもかかわらず、首相はなぜ前倒しするのか説明を避けました。「さまざまな安全保障環境の変化」というだけです。
トランプ米政権は日本に対し、対中国軍事戦略の最前線に立たせるため、軍事費をGDPの3・5%にするよう求めています。今年度のGDPの見通しで計算すれば21兆円超です。今回の表明が、週明けに来日し、首相と会談予定のトランプ大統領への土産であることは明らかです。
首相は、中小業者や医療機関への支援策など聞こえのいいさまざまな物価高対策を並べました。しかし、大軍拡予算が暮らしを守る予算を大きく圧迫することは避けられません。
■大企業優先も不変
米国言いなりをいっそう深刻にすることに加え、経済政策でも大企業を優遇すれば成長が実現するという破綻した自民党政治のゆがみをさらにひどくしようとしています。「戦略的に財政出動を行い」、中長期の「成長戦略の肝」としてAI・半導体、航空・宇宙などの分野に総合支援策を講じるとしたのは、その典型です。
一方、昨年の総選挙、今年の参院選で民意が示された消費税の減税・廃止、パーティー券購入を含む企業・団体献金の禁止に背を向け、今回の所信表明でも言及しませんでした。
首相は、「国家国民のため」と繰り返しました。しかし、日米同盟絶対、財界・大企業の利益最優先の自民党政治を転換することなしに、日本の平和と安全、国民の暮らしを守ることはできません。